相続人不存在の遺贈
ようこそ新津孝之司法書士へ。
本日も姉妹サイトに掲載した記事のご紹介です。
つい先日に掲載した「遺贈」についてです。
遺贈とは遺言書によらないで死後に財産を他人に承継させることです。
遺贈は相続人以外の者に財産を承継させたいときに用いる制度です。遺贈をするには遺言
書にその旨を書く必要があります。
遺贈は相続人がいない(相続人不存在という)ような場合にも用いられることが多いようです。
この度、この相続人不存在の遺贈の手続を深く掘り下げた記事を掲載しました。その概要です。
遺贈では遺言執行者を指定し、その遺言執行者がその事務を行うことが一般的です。
一方で、相続人不存在の場合には相続財産法人が成立し、相続財産管理人が選任されることもあります。ここで遺言執行者と相続財産管理人の権限がバッティングすることになります。このとき、どちらの権限が優先するのでしょうか。(遺言執行者VS相続財産管理人)
一般的には遺言執行者が優先するとされていますが、この見解に疑問を投げ掛けました。
遺贈の事務はいいとして、債務の処理はどうするのでしょうか。遺言者が債務超過の場合に遺贈を優先してもいいのでしょうか?
これについての結論には至っていませんが、この問題を回避するために包括遺贈または清算型遺贈を選択するといいでしょう。
包括遺贈とは個々の不動産や財産を特定せず「全部の財産を遺贈する」という内容の遺贈です。財産の全部なので債務も引き継がれ、遺贈を受けた人(受遺者)が債務の処理をします。
清算型遺贈とは、財産の全部を売却し、債務を処理して残りの現金を遺贈するものです。
先祖代々の土地や商売で使う不動産など現物で残して引き継がせたい場合は包括遺贈を、現金をあげたい場合は清算型遺贈を選択すればいいでしょう。
登記手続について、包括遺贈は特に問題はないのですが、清算型遺贈は特殊です。
現金の遺贈なので遺贈を原因とした登記ではなく、売却の相手への売買を原因とした所有権移転登記を行うことになります。
ただこの場合にいきなり買主へ移転登記をすると、遺言者が亡くなった後の日付で遺言者から買主へ所有権が移転したような登記になってしまうのでこれはできません。
この場合にはまず、法定相続人への法定相続による所有権移転登記を相続人不存在の場合には相続財産法人への登記名義人表示変更登記を申請します。
このまるで間に挟むようになされる法定相続による所有権移転登記や登記名義人表示変更についての考察を行っています。
今回はやや実務的ではありましたが、相続人不存在が予定されている方は包括遺贈や清算型遺贈を選択することがいいでしょう。
それでは。